研究課題/領域番号 |
02455022
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
井上 貞子 昭和大学, 薬学部, 助教授 (00053827)
|
研究分担者 |
岩崎 万理子 昭和大学, 薬学部, 助手 (80054021)
|
キーワード | 動物グリコペプチダ-ゼ / DeーNーglycosylation / Nーグリコシド型糖鎖 / 糖タンパク質代謝 / PNGase / メダカ卵 / リン酸化糖タンパク質 / 表層胞糖タンパク質 |
研究概要 |
本研究者は、ある種の魚卵に糖タンパク質由来のNーグリコシド型糖鎖が遊離状態で蓄積されていることを見出した。動物細胞におけるこのような現象は従来未知であり、この現象の解明によって糖タンパク質糖鎖の存在意義、機能および代謝経路についての新知見が得られることが期待される。初年度の研究で、アユおよびウグイの卵形成期に蓄積される遊離糖鎖が、同種魚卵のホスビチンの一分子種であるリン酸化糖タンパク質の糖鎖と同一構造をもつことで明らかにし、遊離糖鎖がビテロジェニン由来であり、糖鎖の結合と遊離は卵細胞によるビテロジェニンの受容、細胞内輸送および卵黄形成のための限定分解の過程で意義をもつものであることを推定し得た。 本年度は、上記推定に基き、糖鎖遊離に関与する酵素の存在を証明すること、糖鎖遊離の起る時期を特定することを目標とし、実験室で飼育・産卵が制御できるメダカを実験動物として以下の結果が得られた。 (1)メダカ卵においても卵形成期に蓄積されるビテロジェニン由来の、そして受精後のメダカ胚には表層胞局在糖タンパク質由来の遊離Nーグリコシド型糖鎖が存在することを、単離精製した糖鎖の構造解析から明らかにした。(2)更に、糖タンパク質糖鎖の遊離に関与する酵素ペプチド:Nーグリコシダ-ゼ(PNGase)活性の存在を証明し、部分精製酵素を得た。メダカ胚より単離したPNGaseはフェツイン由来糖ペプチドおよびメダカ表層胞由来糖タンパク質のNーグリコシド鎖を、つけ根から遊離させ、その際糖結合AsnをAspに変換させることを反応産物の構造解析から明らかにした。このような反応を触媒するPNGaseは、従来バクテリヤや植物種子に見出されているが、動物細胞においては本研究による発見が初めての報告である。本酵素の生理的役割すなわち、糖タンパク質糖鎖の生成ー離脱機構の普遍的存在の証明とその意義の解明を目指したい。
|