研究概要 |
申請者において発見・育成されたコンジェニック系統(DAB/2FGーpcy)を遺伝学的および病理組織学的に詳細に検討し,雑誌に発表した(J.Am.Soc.Nephrol.)。本研究は国米カンサス医科大学,グランサム教授との共同研究で行い,新らたにヒト臨床例の合併症として観られる,動脈瘤の存在を報告し,ヒト嚢胞腎症に極めて類似した,優れたモデル動物であることを立証した。 共同研究者の長尾は,新らたに育成したコンジェニック系統である(C57BL/6FGーpcy)とDBA/2FGーpcyマウスにおいて,遺伝的背景の異なる2系統が嚢胞の発症が異なることを発見し,発表した(EXp.Anim)。すなわち,出生前より両系統の腎臓を経時的に観察し,DBA/2FGーpcyマウスでは,腎嚢胞が散在性に,早期に発症するのに対して,C57BL/6FGーpcyマウスでは,限局性にかつ後期に発生することを観察した。また,DBA/2FGーpcyマウスでは生後30週齢で全例死亡するのに対して,C57BL/6ーFGーpcyマウスでは生後70週齢でも生存しており,かつ嚢胞が軽度であることが判明した。ヒトの嚢胞腎においても発症時期がバラツイており,また人種差が報告されていることにより,遺伝学的背景の違いがこれらの現象を解明できるものと期待している。本知見は昨年7月の嚢胞腎国際サテライトシンポジュ-ム(於.京都市内)において発表し,世界の嚢胞腎研究者の注目をあびた。 ヒトに観られる幼児型嚢胞腎のモデルとしてC57BL/6Jーcpkマウスが米国より導入され,申請者の発見・育成されたDBA/2FGーpcyマウスとの遺伝学的同座性についても検討を加え,各々の遺伝子が異なる座位に存在することを証明した(EXp.Anins.投稿中)。
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