研究概要 |
本研究の研究代表者において育成されたCongenic Strain(DBA/2FGーpcy)および米国カンサスメディカルセンタ-大学より分与された幼児型マウスC_<57>BL/6Jーcpkは各々順調に継代し,拡大繁殖も可能となり,腎嚢胞の発症経過を病理学的検索した。すなわち,DBA/2FGーpcyマウスと同じくCongenic StrainであるC_<57>BL/6ーpcyを育成し,遺伝学的背景が異なる2系統で,かつ同一のpcy遺伝子を有する2系統間において,腎嚢胞が異なっている知見を得ることができた。出生前より2系統の腎臓を経時的に観察し,D2ーpcyマウスでは散在性に発生するが,B_6ーpcyマウスでは限局性に発生することを観察した。また,D2ーpcyマウスでは生後30週齢にて全例死亡するのに対して,B_6ーpcyマウスでは生後70週齢においても生存し,嚢胞腎も軽度であることが判明した。本知見は1991年の嚢胞腎国際サラテイトシンポジュ-ム(京都)において発表し,実験動物学会誌において公表した。本知見は,ヒトの嚢胞腎において,人種差の問題,同一民族においても嚢胞腎の発症が極めて遅い患者も多数診断されることと考え合わせ,多くの研究者の注目を集めた。 また,幼児型マウス(B_6ーcpk)と成人型マウスの交配実験より,cpk遺伝子とpcy遺伝子とは同一染色体上にない異なる遺伝子であることを検索した(実験動物学会誌)。嚢胞腎の合併症については,米国嚢胞腎グル-プとの共同研究により,D_2ーpcyマウスに脳動脈瘤が併発していることを公表した。ヒトの透析患者(腎不全)に診られる腎性貧血が,D_2ーpcyマウスに観察できる。D_2ーpcyマウスを腎性貧血モデル動物として用い,Erythropoietinの貧血改善実験を行い,ヒトの腎性貧血患者に対する結果と極めて類似した成果を得て,公表した。 免疫組織学的には,尿細管の再吸収に関与するNa,KーATPaseについて,共同研究において進行され,今年度中に公表する予定である。
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