研究課題/領域番号 |
02455028
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研究機関 | (財)東京都精神医学総合研究所 |
研究代表者 |
吉川 和明 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学研究部門, 副参事研究員 (30094452)
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研究分担者 |
相沢 貴子 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学, 研究員
宇佐美 美穂子 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学, 研究員
亀谷 富由樹 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学, 主事研究員 (70186013)
丸山 敬 東京都精神医学総合研究所, 分子生物学, 主任研究員 (30211577)
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キーワード | アルツハイマ-病 / アミロイド蛋白質 / 遺伝子導入 / テラト-マ細胞 / 神経分化 / ニュ-ロン / 老化 / 変性 |
研究概要 |
アルツハイマ-病脳ではβ蛋白質がアミロイドを形成して蓄積することが特徴的であるが、この脳アミロイドの畜積はβ蛋白質前駆体(APP)の異常な代謝分解によるものと考えられている。しかしAPPからβ蛋白質が生成し、アミロイドを形成する機構については現在のところ不明の点が多い。そこで本研究では神経系細胞に高率に分化するテラト-マ細胞の一種であるP19細胞にAPP cDNAを導入して安定形質発現系をつくり、分化刺激によってニュ-ロンにAPPを過剰発現する細胞モデルを作製することを試みた。平成3年度に得られた成果は下記の通りである。 1)P19細胞における内在性APPの発現状態をみると、ニュ-ロン分化に伴ってAPP695が顕著に増加した。したがってP19細胞由来のニュ-ロンはAPP遺伝子発現の面から生体内ニュ-ロンに近い性質をもつものと考えられる。 2)未分化状態のP19細胞にAPP cDNAを導入して比較的安定した発現を示すクロ-ンを得た。この細胞を神経分化させたところ、殆どの細胞が死滅した。この細胞死はAPPの過剰発現によってAPPが分解し、生じたアミロイド原性断片が関わっている可能性が高い。 3)神経分化後に残存した細胞内では、過剰発現したAPPが細胞内小器官に濃縮された状態で存在する像が認められた。とくにライソゾ-ムでAPPの分解が起こっている可能性があり、アミロイド形成能のあるAPP分解断片が生成されていることを示唆する知見が得られた。 これらの研究成果から神経系の細胞ではAPPの過剰産生によってAPPの代謝分解が異常になり、それがニュ-ロン毒性やアミロイド形成を招来する可能性が考えられる。APP遺伝子導入したテラト-マ細胞はこれらの可能性を検証するために有用なものであると考えられる。
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