研究概要 |
石油随伴ガス,天然ガス,ならびに石油精製の過程で大量に産出するプロパンをはじめとする低級パラフィン類や、ナフサ軽質留分や軽油中の飽和炭化水素成分は、化学的に安定なため、燃料に使われるなど用途が限られ、付加価値の高い有用化合物への効率の高い変換が待たれていた。一方、べンゼン,トルエン,キシレンなど単環芳香族化合物は、エンジニアリングプラスチックスの原料などとして需要が高まっており、また、とくに天然ガス成分からこれらの芳香族が直接に得られる触媒プロセスが開発されることは、天然ガスを原料とする石油化学工業の成立が大きく促進される意義をもっている。本研究では、これらの要請を背景として、プロパンを代表とする飽和炭化水素の選択的芳香族化の触媒に、ガリウムまたは亜鉛を含有するペンタシル型シリケートを適用して、65から70%の選択率で芳香族炭化素が得られることを見い出した。ペンタシル型メタロシリケートの細孔構造は、多数あるゼオライト系触媒のうちでも、もっともコーク析出が起こりにくい優れたものであるが、それでも70%もの選択率で芳香族が出来れば、触媒粒子を構成する微細な結晶粒子の外部表面にはコークの蓄積が起こり、細孔入口が閉塞される結果となり、活性が低下が起こった。しかし、この粒子の表面に少量の白金を分散担持した場合は、白金の水素化機能が発揮されて、コークの前駆体となる縮合芳香族体の形成が阻害される傾向が生じるため、触媒の劣化の進行が緩和された。また白金は、析出したコークを燃焼除去するとき再生過程では、コークの燃焼触媒として機能する。このように修飾した触媒を用い、試作した全コンピューター制御の連続流通反応器に適用して、再生過程を含む長時間連続試験運転を行い、マイクロロアクターで観測した触媒性能をより確実に把握し、反応条件の最適諸元を確立した。また、生成物は、GC-MASSにより精細に分析した。
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