研究概要 |
1.老化促進モデルマウス(SAM)の系統維持が順調に行われた。即ち促進老化系8系統,正常老化系3系統計11系統について経時的な老化度評点,寿命等の老化特性および老化アミロイド症,学習・記憶障害等の老化病態のチエックにより,夫々の系統の特性が恒常的に維持されていることが確認された。 2.P/10の大脳新皮質のニュ-ロン数とニュ-ロン細胞体面積の加齢変化をコンピュ-タ-化自動画像解析装置を用い検討したところ,P/10の新皮質では加齢と共にニュ-ロンが脱落し,特に大型ニュ-ロンが生涯を通じ35.6%減少すること,および第IV層以外の広い範囲でニュ-ロン細胞体が加齢に伴い萎縮することが分った。R/1では生涯を通じニュ-ロンの脱落は軽微で,大型ニュ-ロン数は減少しないこと,またニュ-ロン細胞体は寿命末期まで萎縮しないことが明らかとなった。 3.P/8を用い受動的回避反応における潜時が300秒を示すものを学習・記憶良好群,300秒未満を同不良群とし,夫々の群について脳幹部空泡変性を精査したところ,脳幹網様体大細胞群の脊内側部の海綿状変性と記憶障害が密接に関連することが分った。つぎに学習・記憶障害のないR/1の脳幹網様体大細胞群を両側破壊し,受動的および自動的回避反応をテストしたところP/8と同様に学習・記憶障害をみとめ,脳幹網様体と学習・記憶機能との間に密接な関連があることが分った。 4.ヒト血清アルブミンを静注しマウス脳内への移行率を測定したところ,アルブミンの脳内移行率は加齢に伴い増加し,22ヶ月齢のR/1および13ヶ月齢のP/8では同系統の若齢群に比し夫々41%,51%増加していた。即ち加齢に伴い学習・記憶障害を発症するP/8においてより早期に,より著明に脳のバリア機能が低下することが示された。
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