研究概要 |
本システムを用いたこれまでのデ-タ集積および分析結果より,新たに質問紙による患児および保護者の歯科診療に対する不安や恐怖の型分類を行う必要性を見いだした。そこで,これまでの疫学的研究結果に基づいて,歯科不安や恐怖を有する患児のスクリ-ニングのための質問紙を作成した。そして,デ-タ集積のための本システムの一環として,質問紙を用いてあらかじめ患児の歯科治療に対する不安や恐怖の意識調査を行い,歯科治療中の行動(情動と体動)との関連性について行動歯科学的に検討を加えた。質問紙の集計分析は,光学的文字/マ-ク読取装置を用いて行った。 結果,歯科治療中の各生理的指標および体動指標と不安度との関連性では,不安度の増大に伴い心拍数の変化率の上昇を認めた。体動に関しては,頭顔面部より手や足の方が不安の兆候となる動きが表出されていることが示唆された。また,本質問紙法により分類された高不安群は,低不安群に比べて治療時の心拍数の変化率および手・足における行動の表出率が大であった。すなわち,不安度と治療時の行動とは密接な関係にあり,不安という心の問題が何らかの形で行動という外部への現象として現れていることが示唆された。 従って,質問紙と本システムを用いて,不安度と行動の両面から患児をとらえていくことは極めて有用であり,より苦痛の少ない,信頼関係に裏打ちされた診療体系を確立することに寄与すると考える。 これらの結果は,第6回日本歯科心身医学会で発表し,小児歯科学雑誌に投稿した。なお,光学的文字/マ-ク読取装置のソフトの開発に時間を要したため,歯科不安や恐怖の型分類を行うにはさらにデ-タの集積が必要であるので,平成4年度に引き続き継続する予定である。
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