研究概要 |
この研究はパルスNMR法によって1K以下の温度領域、特に10mK以下の温度領域で温度計測を行うマイクロプロセッサーを組み込んだ測定装置を開発し、研究者にとって使いよい温度計として完成させることであった。 過去に作られたNMR温度計は室温に対する安定度の悪いものが多かった。我々が調べたところ,不安定性の主要な原因は同調回路のインダクタンスの温度特性の悪さにあることが判明した。受信回路とパルス発生回路のLC同調回路をCR同調回路へ変えることにより温度特性を格段に改善することができた。 マイクロプロセッサーは時間間隔の測定などに優れた性能をもっており,パルスNMRのコントローラとして最適なものであった。マイクロプロセッサーを組み込んだNMR装置を開発し,そしてプロセッサーの能力を十分に引き出すソフトウェアを開発した。そして,このNMR温度計の性能試験を中心に行った。 その結果,ヘリウム3隔解圧力温度計と比較し,0.3mKから固体ヘリウム3の核磁気転移温度まで反強磁性スピン波による融解圧力の温度の4乗に比例する変化を観測し、正しく温度を測定できることが明らかになった。また,15ヵ月の長期使用試験を行い、安定に動作する事が確認できた。
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