研究課題
試験研究(B)
本研究の目的は、近年社会的にも大きく注目されている地球環境問題解明の一つの鍵として、人間活動にとって直接に最も関係の深い高度数kmより下方の境界層大気の動態を詳細に監視するための、小型かつ可搬型のUHF帯レ-ダ-風速計システムを開発することである。本研究では、平成2年度にレ-ダ-の基本的設計に関する研究を行い、大気境界層を含む下部対流圏全域(地上〜高度約5km)を観測可能とするための詳細なシステム設計値を決定した。その結果レ-ダ-システムは、送信周波数1357.5MHz、送信出力1kWで、開口部の直径2mのパラボラアンテナ3本を持つものとされた。各部の内、アンテナ及び送受信機は既製品(移動無線機用)を改造することで充分対応可能であることが判明した。平成2年度にはシステムの各部内、観測デ-タをアナログーディジタル変換した上で計算機に取り込むための「高速デ-タ取得装置」を購入するとともに、計算機からレ-ダ-を制御し、観測を実施してデ-タを効率よく取得するためのソフトウェアの開発を行った。平成3年度には残る各部の内、アンテナ部を購入し、レ-ダ-システムの完成を目指した。本レ-ダ-システムは平成3年12月に京都大学超高層電波研究センタ-信楽MU観測所に設置され、以来、調整及び試験が行われてきた。現在のところ、まだ限られた量の観測結果しか得られていないが、例えば降雨時に行われたMUレ-ダ-との同時観測結果によると、高度200m程度から約5kmまでの範囲にわたって連続的にエコ-が検出され、水平風速についてはMUレ-ダ-による観測結果とほぼ完全な一致が見られるなど、レ-ダ-システムが正しく動作し、所期の性能を発揮していることが確認された。本レ-ダ-の無線局(実験局)免許の交付を平成4年3月12日付で受けた。
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