核スピンが1以上の核における新しい固体NMR測定法の開発

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02554014
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 引地 邦男 北海道大学, 理学部, 教授 (30000805)
• 研究分担者: 樋口 敬一郎 日本電子(株), 分析技術本部, 次長 ; 津田 栄 北海道大学, 理学部, 教務職員 (70211381) ; 竹腰 清乃理 北海道大学, 理学部, 助手 (10206964)
• キーワード: 固体 / NMR / オーバートーンNMR / ^<14>N / プローブ / 1-アラニン / ^2H / 線形解析

研究概要

本年度は、前年度に測定した1-アラニン単結晶の ^<14>NのOvertone周波数の角度依存性を理論的に検討した。周波数の角度依存性を解析することにより、1-アラニンの ^<14>Nの四重極モーメントの主値と方向を決定できた。得られた四重極モーメントの主値は1.148Mhzで非対称パラメータは0.276であった。これらの値は、NQRで77Kで得られた1.205MHz、0.261によく一致している。また結晶のab面において、得られた四重極テンソルより、オーバートーン共鳴吸収強度(遷移確率の二乗)を計算し、実際の強度と比較したところ、測定結果をわりとよく再現していることがわかった。以上の実際の解析により、オーバートーン法においては、簡便に四重極モーメントが得られるが、一つ欠点があることがわかった。それは、化学シフトの項が除けないという点である。この化学シフトを無視したことが、理論値と実験のずれの主要な原因だと考えられる。化学シフトの効果は、低磁場で小さくなるため、この実験は低磁場で行うことが望ましいことが示された。また、ポリスチレン/ポリビニルメチルエーテル高分子混合体の粉末試料の重水素NMRスペクトルの線形解析を行った。ポリスチレン主鎖の運動に対する混合の効果が検討された。さらに、ガラス転移温度以下の領域での遅い運動を詳細に検討するために、二次元交換NMR測定を行った。重水素NMR法の結果については、測定結果を現在検討中である。以上のように、既存のNMR装置を改良して、核スピンが1以上の核の固体NMRを可能にすることが出来た。検討した手法は、いずれも簡便に固体試料の物性研究の適用できることが示された。

研究成果

• [文献書誌] X.Zhamg: "Composition Dependence of the Misciblity and Phase Structure of Amorphous/Crystalline Polymer Blends As Studied by High-Resolution Solid-State ^<13>C NMR Spectroscopy" Macromolecules,. 25. 2336-2340 (1992)
• [文献書誌] A.Asano: "Inter-Polymer Interaction of Polymer Blend in Solution As Studied by NMR:Polycarbonate/Poly(methyl methacrylate)" Polym.J.24. 473-477 (1992)
• [文献書誌] A.Asano: "Solid-State NMR Study of Misciblity and Phase-Separation of Polymer Blend:Polycarbonate/Poly(methyl methacrylate)" Polym.K.,. 24. 555-562 (1992)
• [文献書誌] K.Takegoshi: "Structure of Semicrystalline Poly[bis(phenoxy)phosphazene] as Studied by ^<31>P Spectral Spin Diffusion" Macromolecules,. 25. 3392-3398 (1992)
• [文献書誌] K.Takegoshi: "Effects of Sample Spinning on ¨Overtone¨ NMR" Chem.Phys.Lett.,. 194. 359-362 (1992)
• [文献書誌] X.Zhamg: "Nuclear Overhauser Effect Study on Intermolecular Interaction and Miscibility of Polymer Blends" Macromolecules,. 25. 4871-4875 (1992)