研究概要 |
本研究は、パルス化したマイクロ波を用いる電子スピン共鳴、すなわちパルスEPR,および電子スピンエコ-装置に更に核磁気共鳴(NMR)の機能を付加してパルスENDORとし、更にこれに常磁性種の研究に対する情報の多元化をうるため新しいラジオ波付加方式、ラジオ波パルス系列の開発導入と、そのための分光器の試作を行うために行われているもので、今年度、以下のような研究の進展をみた。 1)loop-gap共振器の製作:パルスEPRにNMRの機能をもたせるのに最も都合の良い方式として、10数個のloop-gap共振器を試作し、性能について検討した。マイクロ波との結合方式としてGolden couplerを用いた容量性の結合を採用し、Q〜2000の臨界結合からQ<100に至る過結合まで、広い範囲の結合度を安定に得ることができた。これにより、従来のル-プアンテナによる結合の問題点を解決することができた。また低いQ(100)の時のマイクロ波パワ-の周波数分布を測定した結果、約70MHzの広い帯域をえた。このパワ-分布とパルス波形について理論的な解析を行い、容易、迅速、かつ正確に共振点を見いだす方法を新たに開発した。 2)マイクロ波移相回路の製作:マイクロ波パルスの移相の変化を利用して、ベ-スラインの改善、S/Nの向上、不要な信号の除去を可能にするためのマイクロ波パルス4チャンネル移相回路とその制御回路を試作した。 3)高安定マイクロ波発振器の製作:マイクロ波発振器としてガン発振器を用い、phase locked loop回路によってガン発振器の周波数を高安定度(10^<‐8>)をもつRF synthesizerに固定し高安定マイクロ波発振器をえた。 4)RFパルス発生器:RFパルスをつくるためのスイッチ素子としてdouble balanced mixerを採用し、これを制御するドライブを試作した。ドライバ-の出力回路としていくつかの方式を比較検討した結果、FET出力を採用し、スイッチング速度2〜3ns,ドライブ信号の漏れ数mVの性能をえた。
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