研究課題/領域番号 |
02554016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅原 正 東京大学, 教養学部, 教授 (50124219)
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研究分担者 |
泉岡 明 東京大学, 教養学部, 助手 (90193367)
塚田 秀行 東京大学, 教養学部, 助手 (40171970)
佐藤 直樹 東京大学, 教養学部, 助教授 (10170771)
山岸 晧彦 北海道大学, 理学部, 教授 (70001865)
小林 啓二 東京大学, 教養学部, 教授 (50012456)
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キーワード | 固体高分解能核磁気共鳴装置 / パルス系列 / 光透過プロ-ブ / 固体 ^1H高分解能測定 / 固相有機分子ダイナミックス |
研究概要 |
平成3年度は、固体 ^1H高分解能測定を可能にするための装置上の改良を重点的に行った。その結果、CRAMP用パルス系列(BR24)における位相の切り替え応答速度を増大させると共に、各位相毎に、位相及ビRf強度の微調整を独立に行うことが可能となり、広範の試料につき固体NMR測定が可能になりつつある。現存、 ^1H NMRの吸収線の半値幅は約50Hzで、化学シフト差0.3ppmのピ-クは良好に分離している。例えば、クエン酸の水酸基のプロトン及び3個のカルボキシルのプロトンは固体内ではすべて異なった化学シフト(6.3、110.0、11.6、14.8ppm)を与える。以上の結果より、固体高分解能 ^1H NMRが固体の水素結合の状態を研究する上できわめて有効であることが示された。 また、新型装置を用いて以下の具体的研究課題を追求した。1)結晶中プロトン移動と連動した互変異性の研究として、3-ヒドロキシフェナレノン系の他、2-カルボキシ-1,3-ジベンゾトロポロン(2)をとりあげ、固体中でカルボニル炭素とエノ-ル炭素が平均した位置に鋭い一重線として観測されることを見いだした。これは2つの互変異性体間に速い変換過程が存在するか、または分子内の酸素・酸素が2.41Aと極めて短いことより、すでにほぼ対称的構造をとっているものとして解釈させる。2)化合物2の固相内脱炭酸反応をCP/MASで追跡した結果、脱炭酸により生じた1,3-ジベンゾトロポロン(1)における水素結合が1の単結晶における水素結合とは異なるものであることを明らかにした。さらにアニ-ルによりこの固体が1の結晶と同じ集合形態に変化することを見出した。これは、固相内の水素結合の改変を伴う結晶化過程を追跡したことに対応し、興味深い。3)その他、チオフェン系新規ホスト分子により補足されたゲスト分子の放出に伴う水素結合改変の過程の追跡を行った。 これらの実験例にみられるように、新型高分解能NMR装置を用い、固相有機分子のダイナミックス解析についても着実な成果をあげている。
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