研究概要 |
本研究は新規材料の素材としての活性分子種の設計という観点に立脚し,不安定で短寿命でしか存在することができないために材料の素材としての有用性に全く目が向けられなかった不安定分子種を極低温マトリックス単離することにより、その基本的反応性を明らかにし分子設計の素材としての可能性を検討し,従来とは全く異なる新しい物性を持つ有機材能材料の創出を図ることを目的とする。材料の素材としてより有用性の高いα-結合の酸素化の検討を試みた。標的化合物として活性なα-結合であるケイ素-ケイ素単結合を有するジシラシクロプロパン類を選び、酸素にマトリックス中での酸素分子との反応性,付加体の構造の解明及びそれらの熱的,光化学的変解を検討した。ジシラシクロプロパンは溶液中と同様酸素マトリックス中においても300〜400nm付近に接触電荷移動吸収帯(CCT)を示した。この吸収帯のUV照射により生成する反応中間体をIRスペクトルにより追跡し,付加体の吸収が見られた。16Kでの測定後,40K以上でのアニーリングで吸収帯の減少が見られた。室温まで昇温した後、主生成物として酸素分子のケイ素-ケイ素単結合への挿入生成物であるジオキソランが得られた。酸素の同位体実験により付加体は開溶型のパーオキシド構造を有する事が明らかとなった。又,酸素付加体の構造に関する理論計算も合わせて行ない,実験結果を支持する結果が得られた。
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