研究概要 |
周期表16族のテルル元素の化学はヘテロ元素の中でも未開の分野で、最近、その特異な反応性に注目されている。本研究では、IV価のテルル基質がオレフィンに容易に付加できることと脱離基として働くことに着目し、有機テルル(IV)試薬によって誘起されるオレフィンから五員環複素環化合物の一段階変換法の開発および実用化を検討している。これまでに、オレフィンに対して活性である新規の有機テルル(IV)化合物3種[PhTe(=O)OCOCH_3],[PhTe(=O)OCOCF_3],[PhTe(=O)OSO_2CF_3]を開発することが出来た。これらの化合物は反応性に多少の差があるが、通常のオレフィンに対して極めて活性であり、容易に求電子的付加反応を引き起こすことが分かった。すなわち、適当な求核剤(酢酸、カルバマ-ト、ニトリル)と組み合わせると、オキシテルリニル化反応、アミノテルリニル化反応、及び、アミドテルリニル化反応を起こす。更に、導入したテルリニル基は良好な脱離基として働き、官能基変換することができる。特に、アミノテルリニル化反応やアミドテルリニル化反応を高温で行うと、付加の後、引き続いて分子内環化反応が起こり、それぞれオキサゾリジノン、オキサゾリンの五員環複素環化合物をオレフィンからoneーpotで生じることが分かった。目下、その他の複素環化合物への応用を検討中である。また、これらのテルル試薬は温和な酸化剤としても働くことが分かったので、官能基をもつ複素環化合物の合成に対する影響を検討中である。更に、反応の触媒化も今後の課題として検討中である。
|