研究概要 |
固体表面に存在する水素の適当な検知法がないまま水素に関する研究が増加している現状で,高感度の水素検知器を試作して実用化するのが本研究の目的である.手法としては電子励起イオン脱離法(ESD)を採用するが,これは脱離するイオンのイ-ルドが低いためにダイナミックな測定のネックであった。本研究では,励起電子ビ-ムをパルス化して,脱離するイオンを検知立体角の大きいマイクロチャンネルプレ-トを使用して増幅し,パルスカウントして,高感度,高速の測定を達成した.まず固体表面に水が吸着した際に生じる水素イオンのイ-ルドは大きく,確実に検知されていることが確認された.純粋の水素を導入したときは実際に吸着していないのか,単に検知されないのかが確かでない.そこで水素導入後,昇温脱離法で表面吸着量を確認し水素イオンの検知を行った.金属や半導体への水素吸着を室温で行って所期の目的が達成されていることを確認した.さらに水素導入中の動的な測定や,段階的に吸着量を増加していく過程での水素イオンの検出に成功した. 結果として,1.Si(111)面よりはSi(100)面の方が水素の吸着量は少なく,2.Si(100)面よりは数度傾斜した面の方が吸着量が大きいなどの事実が判明した.3.水素吸着による表面の腐食の進行もRHEEDで確認された.4.従来,半導体の表面は安定で残留ガスの影響を受けにくいとされてきたが本装置により10^<-10>Torrの超高真空中でも,水その他の水素化物の吸着が進行していることが明らかになった.今後の課題として,検知立体角を更に大きくして,脱離イオンの角度分布を観察して吸着の様式をミクロに研究できるよにうすること,水素の吸着後,酸化やエピタキシ-成長に及ぼすシリコンのダングリングボンドの終端化の効果を確認し定量関係を示すこと,および計測系を改良して高速化を計ることである.
|