研究概要 |
試料中の重金属等の原素の分布状態を原子レベルで観察する原子直視コインシデンス電子顕微鏡の試作を行っている。本年度はコインシデンスを行うための基本要素について試作を行った。 まず,X線検出器として従来用いられているSi半導体検出器にかえNaIシンチレ-タと光電子増倍管を組合わせたものを試作した。エネルギ-分解能は43.7%と悪いが,軽元素と重元素の識別には十分である。又時間応答に関しては、立上り時間0.5μsという高速性能が得られた。 次に、電子検出器として位置有感検出器を用いる事にした。2枚のマルチ・チャネル・プレ-ト(MCP)で入射した電子を増副し,両面分布型半導体検出器(PSD)へ入射させる。この検出器により1mm当り16本の分解能を得,検出信号としては立上り0.5nsの高速応答性能が得られた。この2次元検出信号の処理に市販されている演算回路を用いると,毎秒1000カウント程度にしかならず使用できない事が判明した。このため演算回路を自作する事にし,動作試験には位置有感検出器としてマルチアノ-ド光電管を用いる事にした。現在回路の主要部である割算器の高速化を行っており50MHz動作を目ざしている。 一方コインシデンス電子顕微鏡用に、放出電子のエネルギ-分散が少ない電子銃の試作も行った。まず既在の電子顕微鏡にLaB6電子源を取りつけ,これを熱電界放射型として用い輝度の測定等を行った。 以上のように、本年度はコインシデンス顕微鏡の実現へむけての基本構成技術の開発を行った。
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