研究分担者 |
角田 一雄 日本精工株式会社, 総合研究所, 所長
宮沢 薫一 東京大学, 工学部, 講師 (60182010)
安永 暢男 新日本製鐵株式会社, 第一技術研究所, 主任研究員
鈴木 重信 職業訓練大学校, 福祉工学科, 講師
高橋 裕 東京大学, 工学部, 助手 (10216765)
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研究概要 |
透過電子顕微鏡観察においては薄膜試料の調整がその作業の50%以上の比率を占めるといわれている。この薄片試料においては電子線を十分に通すだけの厚みであり、かつ表面は滑らかであることが要求され、試料作製の歩留りがすべてを律速するからである。特にセラミックスにおいては大半の場合が化学的に安定であるため、イオンシニング法が一般的に用いられているが、イオン衝撃による損傷(微小欠陥の発生,非晶質化)や表面荒れの問題を抱えているのが現状である。本研究においては、超精密位置制御機構を備えた自動研磨装置の試作を行い、機械研磨のみにより歪の入らない透過電頭用薄膜試料の作製技術の確立を目的とした。 初年度は、従来よく用いられてきた種々の薄膜化法(研削,ボリッシング,ディンプラ-研磨)による表面損傷の状況を透過電頭により調査した。炭化ケイ素多結晶体においては研削,ディンプラ-研磨のいずれにおいても表面に著しい残留応力が残り、粒内割れおよび粒界割れが伴っていた。また、ダイヤモンドポリッシングにおいては高密度の表面スクラッチが生成していた。これらはすべては電顕試料作製法としては適さないことがわかった。また、軟質なセラミックスである窒化アルミニウムにおいては種々の硬さを持つ砥粒(アルミナ,酸化クロム,錫ラップ)によるポリッシングを試みたが、いずれの場合も表面に高密度転位の生成が伴うことが分った。 これらの観察結果から、新しい研磨の概念にもとずく'ス-パディプラ-'の設計・開発を行った。溶液中で回転数10^4min^<-1>以上で回転するディスクを非接触で試料表面に近ずけることにより、高速砥粒が表面を無歪で研磨を行うことを原理とする。設計段階では振動対策が重要な課題であった。系全体の剛性を高める工夫によりこの問題を解決し、現在、この装置の組み上げを行っている最中である。
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