研究概要 |
溶接部を対象に定量的かつ簡便にき裂を非破壊評価できる小電流型電位差法システムの開けを目的として研究を実施した。成果をまとめて以下に列記する。 1.溶接部の非破壊検査は,どの種の非破壊検査法においても容易ではない。原因は溶接部材質の不均質にある。電位差法の適用に際しては,電気的不均質が問題となる。たとえき裂等の欠陥がなくとも,溶接部では電位分布が変化する。これは溶接部の抵抗率と母材の抵抗率が異なること,すなわち電気的不均質による。溶接部にき裂が存在する場合には,電位分布はさらに変化する。このように問題の複雑な溶接部のき裂を対象として,溶接部にき裂を有する材料表面での電位差分布と溶接部もき裂もない一様材表面での電位差分布の違いを,き裂による変化と電気的不均質による変化およびこれらの積からなる項の和で表すことにより,理論解に電気的不均質の影響を考慮するための較正手法を考案し,二次元試験片によりその有効性を検証した。 2.電位の特異点法に基づく解析プログラムを発展させ,直接三次元き裂問題を解析できる高速コンピュ-タ解析プログラムを開発した。 3.直流電位差法を用いたき裂長さ評価に及ぼすき裂閉口の影響について検討した。具体的には,最大応力拡大係数K_<Imax>,応力比,き裂長さを種々に変化させて導入した疲労き裂を対象とし,これに引張りから圧縮まで広範囲の荷重を作用させたときの評価精度を調べた。これにより圧縮荷重を作用させた場合には,荷重の増加に伴い,評価精度は悪化するものの,無負荷および無負荷からK_<Imax>に相当する引張り荷重を作用させた場合には,疲労き裂導入条件によらず実際のき裂寸法の15%程度の誤差で妥当な評価が可能であることを確認した。
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