研究概要 |
溶接部を対象に定量的かつ簡便にき裂を非破壊評価できる小電流型電位差法システムの開発を目的として研究を実施した。成果をまとめて以下に列記する。 1.配管の溶接部に存在するき裂を対象として,先に開発した高精度評価に比べ評価精度が若干低下することは容認するものの,その三次元形状・寸法を平板に存在する二次元き裂に対する電位差法き裂評価の解を用いて簡便に求める手法を考案した。そこではき裂前縁の曲率が大きい三次元き裂をも対象にできるよう,電流の流線に基づいて二次元解を補正するという独自の手法を導入した。さらに実際にオーステナイト系ステレンス鋼(SUS304)製の配管溶接試験片を用い,熱影響部にき裂を導入し,実験を実施した。なお溶接方法は,突合せ,TIG,多層溶接である。本実験により,本簡易評価手法の有効性を検証した。 2.計測電位差に及ぼす溶接の影響について検討した本研究を踏まえ,電位差への影響を無視し得る溶接法の導入により,分岐したモデルき裂を有する試験片を作製するという手法を考案し,これに基づき直流電位差法により分岐き裂を非破壊評価する方法を開発し,提案した。 3.化学プラントの蒸留塔では,腐食性の高い部分にクラッド材が用いられる。特に蒸留塔内部に上下方向で腐食性に分布がある場合には,場所によりクラッド材と軟鋼を使い分けることがある。クラッド材と軟鋼の間の溶接は異材継手となるため,異種金属接触腐食による局部減肉や溶接部のき裂が問題になる。ここでは先に提案している手法を異材継手部にはじめて適用した。二次元垂直き裂を対象とした実験を実施して,電気的ならびに幾何学的に複雑な継手部に存在するき裂を,同手法の適用により十分な精度で非破壊評価できることを確認した。
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