研究概要 |
“超音波による射出成形金型内樹脂の凝固状態測定技術の開発"について,本年度は,(1)金型キャビティ内に流入する樹脂の流入・充填状態の検出や流速の測定,(2)固化状況の測定,(3)結晶化度の測定に関して実験的検討を行った.その結果,以下の様な種々の有用な結果が得られた.(1)金型キャビティ内に樹脂が流入すると,金型キャビティ面における超音波の反射率が著しく変化するために,樹脂の流入を超音波反射波の音圧の変化より検出することができる.具体的には,樹脂が流入する前後で,金型キャビティ面における超音波の反射率は約10%程度変化する.また,音圧の変化は,樹脂の物性値より求めることができる.(2)金型キャビティ面における超音波の反射音圧の大きさから,超音波を投射している面積内に樹脂が占める割合を求めることができる.(3)近接した2点の音圧の変化を測定することにより,流入する樹脂の2点間の平均速度を測定することができる.(4)金型キャビティ内で樹脂が固化すると固化層と固化していない層との境界面で超音波が反射し,その反射波形を観測することができる.また,この境界面の位置に応じて,送信波と反射波の時間間隔が変化するため,樹脂の固化層の厚さを求めることができる.つまり,金型キャビティ内の樹脂の固化状態を検出することができる.(5)成形品の結晶化度に応じて成形品の縦波速度や横波速度が変化することが明かとなった.具体的には,結晶化度が高くなると成形品の縦波速度や横波速度が速くなる.このため,縦波速度や横波速度を測定することによって結晶化度を求められることが分かった.
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