研究概要 |
超低落差用にダリウス形横流水車を考え,最終年度である本年度は,1.高効率運転法の検討:理論的に推算できるランナ特性と実験から求めた吸出し管・増速機・発電機の個々の特性を水車設計時に有用な形で組合せ,入力側の水位変動や出力側の負荷変動時におけるシステム全体の運転状態を再現できる数値シミュレーションプログラムを開発し,実験において経験した過負荷時の周期的不安定現象等の再現を検証確認した.また水車の出力特性と自励式発電機の負荷特性との関係から生じるランナ最高効率点と正常安定運転点との不一致について,水車構造の面から解決策を検討した.2.吸出し管形状による流れ損失の低減化:これまで不明であったランナ下流での流れ損失を拡大率が異なる数種類の吸出し管について計測し,出口での廃棄損失も考慮した最適拡大率について検討を加えた.その際ランナ両端での無効流量による壁面近傍への流れの偏りが一様減速流の場合より大きな損失をもたらしていることがわかった.3.導入管と吸出し管を含むランナ前後のダクト形状と案内羽根設置によるランナ性能の向上と無効流量の低減化:実験からこれを調査することは装置の構造上難しい.そこで理論計算から検討することとし,鏡像法を用いた既存のランナ性能計算スキームに任意の壁形状を持つ流路を平行壁流路に等角写像するプロクラムを開発,組合せて調査した結果,ランナへの流入部およびランナからの流出部にそれぞれ縮小拡大流路を設置することの有効性が得られた.4.ダリウス水車の設置計画法の作成:現段階までの調査結果をもとに水車発電システムとその全体構造の設計手順を整理し,既存の水車形式との比較選定指針を示した.以上により,低落差水力利用システムの開発という当初の目的は達成できたと考える.本水車の実用化推進には更なる効率向上が望まれる.そのため積み残された問題点を引続き今後も研究する予定である.
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