研究概要 |
形状記憶合金(SMA)によって水力機械の羽根形状を変化させる準備として,単独翼の形状を変化させることを試みた。すなわち,設計迎え角よりも大きな迎え角における翼性能の低下を,翼形状の変化により抑制することを目指した。 試作翼は,基本単独翼を翼弦方向に二分割し,1/4弦長点を回転軸として前半部を迎え角が小さくなる方向に回転させるようにしたものである。前半部分の基本翼形状からの変化量は回転角度で9゚とし,基本翼形状からの変形,また,その逆の過程を実現するため,互いに異なる形状を記憶させたSMAを組み合わせることによって,2方向性を持たせることとした。使用する形状記憶合金は,繰り返し寿命と耐食性を考慮して,NiーTi合金の線材とした。 供試単独翼について,風洞試験が行なわれ,流れの可視化実験と後流速度分布の測定により,変形前後の流れの変化の様相が調べられた。その結果,基本翼背面で流れの剥離が起きている大きな迎え角において,翼形状の変形による流れの剥離の抑制が確認された。よって,SMAによる翼形状変化によって流れの制御が十分に可能であることが示された。 今年度の試作研究によって,(1)SMAアクチュエ-タへの長時間通電を解消するためのロック機構の開発,(2)作動流体を水とした場合の対策,(3)翼列への応用が,解決すべき当面の問題点であることが明らかにされた。したがって,当初予定していた試作羽根車の設計の前に,上記3点を解決すべく,計画の修正を行なった。
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