本研究の目的は、導電性樹脂電極による放電加工法を実用に供することが第一であるが、液中微小ギャップにおける放電現象を解明することも放電加工法の欠点解消に役立つものとして注目されており、第二の目的とした。 第一目的の放電加工法については、当初の計画である「各種導電性樹脂材料の放電特性と繰り返し放電の安定性」については、充分放電加工に適用できることを確認できた。フッソ樹脂にカ-ボン粒子を、アクリル樹脂にカ-ボンや銅粒子を混入した導伝性樹脂電極を製作し、鋼の表面に文字や形状刻印を試み、通常の小型放電加工機を使用し、素人でも充分加工できることを確認した。これらについては電気加工学会誌にまとめて投稿中である。 現在樹脂電極の最大欠点である消耗の度合を調べ、できるだけ消耗の少ない樹脂電極材料を検討している。また形状工作の容易さという特性を活かした応用面を模索中である。併せて樹脂電極による加工面に特有の表面性状を付加出来ないかも検討中である。 第二目的の放電現象の確認であるが、研究代表者が提言した並列放電柱が確立され、その結果として同時複数個放電痕が形成されることを、樹脂電極においても確認できた。この現象は学会誌で否定されていた現象であり、放電加工における加工速度向上には限界があるとされていた。すなわち加工速度向上にギャップエネルギを増大すれば、放電痕が大きくなり、加工面が粗くなるので工業的には加工速度に限界があるとされていた。本研究の複数個放電現象を応用できれば、ギャップ間でエネルギを数カ所に分散して加工が進展するので、加工面粗さを悪くする事なくエネルギ投入の増大が可能となり、加工速度改善の一方策として注目されている。
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