研究概要 |
本研究は,数千℃にも及ぶア-ク柱の確立を,軟化温度約200℃の導電性樹脂電極により行い,その特異性を活かして放電加工法への応用分野を開拓することを目的としている。 放電現象についてであるが,製作した導電性樹脂電極は抵抗率が高抵抗材料に属するものであり,パルスア-クが維持されている間,電極表面に高い電位差が現れア-ク柱が並列に分離する特異現象がある。その結果一度に複数個の電極点が形成されることを明らかにし,電気加工学会誌に掲載した。そこでは,この現象の放電加工への応用が,[放電加工法は加工速度が遅い]という一大欠点の改良につながるとしている。 放電加工はパルス放電ごとに形成される放電痕の集積により材料を消耗(加工)するものであり,できるだけ小さな放電痕を形成し,精密加工に応用されているものである。放電電力を大きくすれば,加工速度を早められるが,それでは放電痕がおおきくなり,精密加工が不可能となる。つまり放電加工法では加工速度向上に限度がある。ここに,本研究の樹脂電極により一度に数多くの放電痕を形成させることは,放電加工法にとって大きな意味を持つことになる。 一方,導電性樹脂電極を用いた応用として,軟化点200℃の彫削や成形しやすい柔らかい樹脂で,鋼の表面に文字の刻印や放電硬化が可能なことを実例を示して明かにした。また微少な凹凸面でも均一な放電面を形成し得るので,表面積の拡大,鍍金などにおける密着度の強化等にも応用できることを示した。とくに銅粉混入の導電性樹脂電極は,繰り返し放電の安定性並びに消耗量の点から非常に良好なものである。これらをまとめて電気加工学会誌に投稿した。
|