研究概要 |
本研究により得られた成果は次の通りである. 1.これまで知られていない新強弾性五酸化タンタル単結晶の物理定数を,振動子を用いる共振法で初めて測定した.従来本研究グル-プで求められているTa_2O_5薄膜の弾性定数と誘電率に比較していずれも大きな値であった.この差については検討中である. 2.分割導波路型弾性表面波コンボルバの効率に対する厳密な理論解析を行った.すなわち,△V/Vガイドの導波特性を精密に求めることによって導波路上に発生する非線形成分を計算し,それを励振源として導波路と直交方向に発生する2ωSAWの解析を行った.ガイドの解析は困難な点が多いため,従来の解析は等方体基板における基礎方程式に基づいて行うスカラ波動近似解析がほとんどであり,基板の異方性を精密に考慮して解析する解析はほとんどなされていなかった. 128°YX・LiNbo_3に対する数値解析を行い従来の実験値に合う結果を得た.これにより,弾性表面内コンボルバの設計(基板のカット,導波路形状)を可能にした. 3.分割導波路型弾性表面波コンボルバを作成し,出力電極指の電気抵抗の影響を調べた.高周波化することにより,1本当りの電気抵抗が無視できなくなるため,出力電極を分割し等価的な電気的損失を軽減できた.4等分することで,約20dBの改善が行えた. 4.今後の課題として次の点が上げられる. (1)本薄膜の強弾性を明らかにし,弾性表面波非線形デバイスへの応用を図る. (2)基板の適切な選択をおこない,エピタキシャルな薄膜の作成条件を明らかにする. (3)コンボルバ効率の最大におれ基板材料,カット,導波路形状を解析的に求める.
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