研究実施計画に従って研究を遂行し、ほぼ初期の成果を得たのでその概要を以下に記す.1.帯域7MHzの高精細画像信号をTAT方式によって1/2に帯域圧縮してβーVTRに記録・再生するシステムを構築した.帯域圧縮した画像信号はVTRの輝度信号記録帯域にFM方式で記録し、制御信号は低域変換色信号記録帯域に4相PSK方式で記録した.2.再生された4相PSK信号のキャリア周波数を逓倍したものを再生画像信号のリサンプリングクロックとすることにより、VTRのジッタを吸収して安定な再生画像を得ることができた.再生画像の解像度は従来方式の約1.6倍に向上した.再生画像のSN比は約35dB、制御信号のビット誤リ率は10^<ー7>から10^<ー5>の範囲である.3.解像度が帯域圧縮率から予想される2倍まで向上しない原因を探求した結果、実験システムのベ-スバンド周波数特性のー6dBしゃ断周波数が3MHzしかなく、ナイキスト特性から要求される3.5MHzに達していないため、サンプル間干渉が生じること、VTRのFM系の振幅及び群遅延の周波数特性の奇数次成分によりFM復調信号に高調波歪が生じることが原因であることが判明した.4.磁気系の非直線特性により、4相PSK信号とFM信号の高次歪がFM帯域内に入り、FM復調信号に干渉を生じ、これが再生画像信号のSN比を低下させることが分かった。5.以上の結果より、TAT帯域圧縮装置と適合させるには、より帯域の広いVTRが必要であることが明らかになったので、SーVHS VTRを改造して新しいVTRを試作した.6.改造されたVTRのベ-スバンド周波数特性はー6dBしゃ断周波数が3.3MHzと広くなった.FM系の伝達特性は、群遅延特性は十分であるが、振幅特性にはまだ奇数次成分が含まれており、周波数特性の等化が必要である.
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