研究概要 |
本研究では,従来極めて広い周波数帯域と複雑な送受信器が必要と考えられていた多重波遅延時間差の測定が、通信品質に直接関係する遅延分散(delay spread)に限定すれば、インサ-ビスで、即ち特別な送信信号を必要とせずに、従来のディジタル受信機の復調出力に着目するだけで、極めて容易に測定可能で,装置の試作も簡易なことを明らかにした.以下に、本研究の主要な成果をまとめる。 1.BPSKのQーch(直交チャネル)出力,あるいはQPSKの“IーchとQーchの出力絶対値の差の絶対値"すなわち,||I|ー|Q||を観測すれば遅延分散が推定可能であることを明らかにした。 2.簡易なディジタル信号処理回路により,測定回路が容易に試作可能なことを示した. 3.セルラ-方式特有の同一チャネル干渉が全く同じ測定回路により測ることができ,C/Iが推定可能であることを明らかにした. 4.多重波遅延分散と同一チャネル干渉が共存するときには,測定器出力からは原因を特定できない.しかしながら,このような場合でもビット誤り率とは依然として良い対応関係にあることが判明した. 5.よって,どのような伝搬環境下であれ、BPSKのQーch出力,あるいはQPSKの||I|ー|Q||を観測することにより、通信品質の監視が可能なことが明らかとなった. 今後本手法を、例えばセル内あるいはセル間のハンドオフ(hand off)を行なう際の判定基準として利用するなど、幅広い応用が期待される。
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