研究概要 |
本研究は2つの目的で行っている.1つは高分解能ジョセフソンサンプリングシステムの開発であり,もう1つは超伝導線路・常伝導線路の超短パルスの伝搬特性をそのサンプリングシステムを用いて解析することである.以下,この2つについて平成2年度に得られた知見を述べる. 1.高分解能を有する波形観測システムの開発・・・・最初に,超短パルスの発生・伝搬を念頭においてシステムの核となるジョセフソン回路を設計し,回路解析プログラムにより各パラメ-タの最適化を行った。解析の結果、超短パルスの発生には一接合量子干渉計の利用が有効であることが判明した。回路解析の結果を踏まえてジョセフソン回路のパタ-ンを設計し、既にNb/AlO^×/Nb接合及びMo薄膜抵抗技術を用いてほぼ設計通りのジョセフソン回路の作製には成功している。回路作製プロセスの開発を通して、層間絶縁膜としてのAlの陽極酸化膜の使用がジョセフソン接合の初期故障(短絡)を著しく減少させることを見いだした。システムとしては、超短パルスの伝搬を観測できる段階には達したが,試料ホルダ内でのクロスト-ク及び外部機器からの誘導ノイズが高分解能化の障害になっており,現在その改良を進めている。 2.超伝導・常伝導線路の超短パルスの伝搬特性の解析・・・・システムの開発と並行して超短パルスの伝搬特性を数値的に解析した.その結果,長距離伝送では超伝導配線が常伝導配線よりも優れていることが明らかになった.特にグランドプレ-ンに酸化物超伝導体を用いるだけでも,優れた伝搬特性が得られることが分かった.これを実験的に検証するための基礎として,酸化物超伝導体と金属超伝導体の超伝導コンタクトをとる実験を試みた.その結果中間に銀を挟むことによって良好なコンタクトがとれることが明らかとなった.
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