研究課題/領域番号 |
02555086
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 正男 東京大学, 医学部, 教授 (60010708)
|
研究分担者 |
矢口 喜明 テルモ株式会社, 技術開発部・ME開発部門, 研究員
池田 研二 東京大学, 医学部, 助手 (70010030)
渡辺 瞭 東京大学, 医学部, 助教授 (00009937)
|
キーワード | 指向性補聴器 / ホルマント強調 / 子音強調 / 雑音抑圧 |
研究概要 |
今年度に実施した研究は、次の3項目から構成される。第一に、騒音環境下に於ける指向性補聴器の有効性について検討し、かつ受聴効果をあげるための必要最低限の指向特性について検討した。第二に、前記の機能を実現する信号処理方法について検討した。第三に、子音強調のための信号処理方法について検討した。以下に、各項目について説明する。 (I)雑音とし白色雑音、交通騒音、レストラン・ノイズ、バブル・ノイズを用い、それらの等価騒音レベルを難聴者が日常生活で暴露される量(70dB A)に設定して、検査語音と同時に聴取させた。結果として、補聴器の指足性の有無により、母音の明瞭度はほぼ一定であったのに対して、子音の明瞭度には約12dBの改善が認められた。 (II)小規模で鋭い指向特性を形成するディジタル回路の設計では、十分な成果をあげられなかった。従来の指向性マイクロホンが位相差により指向特性を形成させる方式であるのに対して、本研究では、単に位相差だけでなく周波数をも信号処理的に変え、長いマイクロホンを使わずにある程度の指向特性を形成させる方式を採用した。しかし大きさの制約があるため、雑音に弱いという欠陥が残った。 (III)音声波形のうち子音部にはホルマント成分が存在しない、というのが従来の定説であった。しかし本研究では、母音への過渡部分を含まない子音部のうち、破裂音(カ行)には2〜4kHz付近にホルマント成分が、また摩擦音(サ行)には若干のホルマント成分が、それぞれ検出された。この結果は、母音を強調するための手法であるホルマント強調が、子音のあるものにも適応可能であることを示唆している。
|