研究概要 |
船舶の疲労設計に関し、その作用外力を明らかにするため、本年度は平成2年度の北太平洋に引続き日本〜ペルシャ湾海域での実航海状態での実働荷重を調査した。その結果,両海域では最大有義波高に差があり北太平洋海域は船舶にとって厳しい海域(有義波高で約1.5〜2倍)であることが判った。両海域とも長期分布はワイブル分布で近似でき、しかも船舶の実航海状態は平穏な海域を航行している状態と様々な荒れた海域を航行している状態とにモデル化できることも判明した。従って前年度提案した標準変動荷重モデルの有効性を他の海域でも実証できた。 この標準変動荷重モデル-荒れた海域を6種類の嵐でモデル化し,同時に平均的に遭遇する6種類の嵐の数を定めた-により軟鋼材を用いた疲労き裂伝播試験を行った。嵐へ遭遇する時刻歴により,同じ大きさの嵐であっても,嵐1回当りにき裂が進展する量に差があること,それが同じ嵐であっても下限界応力拡大係数及びき裂開口点に差があることに依存することを明らかにした。また,き裂伝播速度に対する6種類の嵐の速度比を明らかにし,き裂発生後の余寿命評価を遭遇する嵐の大きさ及び回数で推定し得ることを示し,嵐への遭遇の仕方により相当短期間でき裂伝播量が多くなることも示した。更に,このき裂伝播挙動をモンテカルロシミュレ-ションで解析することを試み,シミュレ-ション法を構築し,その結果が定性的にも定量的にも実験結果と良い一致をすることを確かめた。 昨年度に引続きFEM解析に基づいた多数切欠付き試験片を開発し,疲労試験を行い,1本の疲労試験から寿命分布を推定できることを示すと共に,微小き裂成長,合体のメカニズムについていくつかの知見を得た。
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