研究概要 |
本年度は、土木鋼構造の機能性向上に対する低降伏比高張力鋼の特長を明らかにするための基本デ-タとしての機械的性質の調査,応力ーひずみ関係のモデル化および低降伏比高張力鋼を用いたはり断面の曲げ耐荷力特性に関する検討を行なった。得られた研究成果は以下の通りである。 1)製鉄メ-カ-各社より低降伏比高張力鋼鋼板を多数提供してもらい、それより作成したテストピ-スによる材料試験結果と,メ-カ-各社で行なわれた材料試験デ-タより、低降伏比高張力鋼の機械的性質に関するデ-タベ-スを作成した。 2)デ-タベ-スには鋼種,板厚,テストピ-ス規格,弾性係数,ポアソン比,上降伏点応力度,下降伏点応力度,極限強度,破断強度,ひずみ硬化開始ひずみ,ひずみ硬化係数,一様伸び,全伸びが収録されており、これらの諸量と鋼種(製造板厚)の関係が統計的に評価される。 3)降伏比について60キロ鋼以下では0.75,80キロ鋼では0.8と鋼種による差が見られた。また60キロ鋼以下では明瞭な降伏棚が存在するが70キロ鋼では降伏棚の有無が混在し,80キロ鋼では全て降伏棚の無い応力ーひずみ関係であった。 4)一般鋼,降伏棚の有る低降伏比高張力鋼および降伏棚の無い低降伏比高張力鋼の応力ーひずみ関係を考慮した工形断面材の曲げに関する極限強度解析の結果,断面の全塑性強度を確保するための幅厚比制限に関して低降伏比高張力鋼が一般鋼に比べて有利なこと,また回転能(塑性変形能)についても、降伏棚の有無に関係なく低降伏比高張力鋼の特長が現われることを明らかにした。
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