研究概要 |
本研究は,貯水池操作を中心とする洪水制御の信頼性を高めるべく,洪水を制御する際に必要となる情報の処理や意志決定を定量的情報および定性的情報の両面から総合的に支援するエキスパ-トシステムを開発するものである.本年度は,主として,洪水制御支援システムの全体構成と部分システム設計に重点をおいた検討を行い,以下の成果を得た. (1)洪水の制御が降雨・流量の確率予測のように主として数学的なモデル化の適した定量的かつ手続き的なデ-タ処理と,ダム操作規則のように言語形式で表される知識や河川管理者個人の資質や経験に依存する定性的な情報処理との両者を統合したものであることに注意し,数学的モデル化の可能な問題を処理する手続き型知識システムと言語形式で表現される知識の利用機構である推論システムとの協調と,推論システム内部での知識システム間の協調を軸とした協調問題解決型洪水制御支援環境を提案した. (2)知識システムとして,確定的なプロダクションシステムによる推論を行うものと,ファジイ推論を行うものの両者を導入することにより,実務者の意志決定過程を計算機上に再現する方法について検討した.特に,プロダクションシステムにおいては,知識と推論制御文を完全に分離することと,ル-ルとワ-キングメモリ-の照合の手法を改良することにより,知識の拡張を容易にした.ファジィ推論システムにおいては河川管理者の知識を容易に知識ベ-ス内に取り込むための手法を提案した.また,ワ-キングメモリ-内のデ-タに確信度という指標を付加することにより,プロダクションシステムとファジィ推論システム間の協調関係を実現した. (3)以上の環境をオブジェクト指向プログラミングの手法を用いて計算機上に実現し,実流域への適用例を通じて,その性能を検討した.
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