3つの感度波長帯を有する多重分光赤外線カメラを製作するとともにこれを用いて得られる多重分光画像の画像処理アルゴリズムを開発することによって、建築熱環境の計測手法を実用化することを目的として、今年度は以下の研究成果を得た。 (1)多重分光としての波長帯を決定し、多重分光赤外線カメラを製作した。センサ部製作のための材料費により、既存の装置のセンサ部を改良し、従来より用いられている3〜5μm、8〜14μm、と合わせた3波長帯からなる装置を製作した。これに加え、大気補正に必要となる対象物までの距離を測定する距離計も装備した。新たな感度波長帯は6〜9μmであり、収録画像の積算処理を行うことによって、他の感度波長帯のSN比に相当する性能を得ることができた。 (2)製作した装置の有効性について検証した。各波長帯の熱画像についてキャリブレ-ション及び各画像間の画像レベルでの位置合わせのためのレジストレ-ション処理等を検討し、多重分光画像処理を可能とした。 (3)主な対象物に関して各波長帯における熱画像の特微を抽出した。建築熱環境の計測対象となる、タイル仕上、モルタル仕上げ等の壁面、ガラス面を対象に、天候(特に日射の状況と絶対温度をパラメ-タとして)の異なる種々の条件下において、多重分光画像を収録し、各波長帯における特微を考察した。これによって、多重分光画像処理アルゴリズムの基礎資料を得た。 (4)(3)の研究成果を踏まえて、表面温度の計測手法を確立するために、反射成分の影響、日射の影響、大気吸収の影響等の定量化を進めている。 本年度は、多重分光画像処理アルゴリズムを開発するため、マイクロコンピュ-タを購入した。
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