研究概要 |
本研究では、屋外実環境下において建築外壁面の剥離及び亀裂に関する情報を赤外線を利用して検出するための測定方法について新たに試作した赤外線放射カメラによる実験結果と熱収支計算結果を基に検討を行った。 測定アルゴリズムの開発に先立ち、市街地を構成する主な建築材料であるタイル、モルタル及びコンクリ-ト等の剥離検出に適すると予測される波長域(5.5〜7.1μm,5.5〜7.9μm)と大気の窓領域(8〜14μm)に分光感度を有する放射カメラを試作し、さらに外壁面における汚れの形状及び日射反射率を推定するため可視CCDカメラを装着した。試作した放射カメラを用いた剥離、亀裂検出実験の結果、1)周囲反射の影響が低減できること、2)可視ディジタル画像による日射反射率の推定値は熱収支シミュレ-ションによる疑似剥離画像を作成するうえで十分な精度を有することなどを明らかにし、試作した多重分光赤外線放射カメラの有効性を示した。 次に放射カメラの効果的な運用方法及び得られた熱画像の解析方法について熱収支計算を基に検討した。まず応答係数法を用いた1次元の熱収支計算より、剥離検出に最も適した時間帯の予測と剥離部の厚さ及び表面からの深さをパラメ-タとして、それぞれの場合における検出に必要な健全部との温度差を示す剥離線図を作成した。 剥離部に汚れや亀裂が重畳している場合に、それらを効果的に除去する方法を提案した。具体的には可視ディジタル画像によって得た汚れ、亀裂の光学的情報(形状、日射吸収率)を基に有限要素法による熱収支シミュレ-ション画像を作成する。そして実際の熱画像との間で比較演算を行い、汚れ部を除き剥離部のみを抽出した。実際の剥離形状と比較した結果、この方法によって剥離部分のみを抽出できることを明らかにした。以上の試作及び検討結果より、熱画像による最も効果的な外壁剥離検出のための診断アルゴリズムを作成した。
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