本年は、前年までの研究を補完するため、改築・改修時の一時使用建物の使用実能及びコスト、建物解体コスト、及び内部壁の徹去を伴う大規模改造コストについて、アンケ-ト調査及び事例のモデル積算を行ない明らかにした。また、耐震補強事例のコストデ-タを入手した。以上によって、公立小中学校校舎の新築工事〜解体までのライフサイクルを網羅するコストデ-タを整えることができた。また、昭和62・63年度に校舎の新増築・大規模改造等を行った小中学校の約1/8をサンプルとした配置・所要室構成の分析を行ない、近年の校舎整備の行なわれ方を明らかにした。同時に市区町村の学校施設担当者に対する学校施設整備に関する重点項目のアンケ-ト調査を行ない、現在の課題及び将来展望についての意識動向を明らかにした。全体として、担当者の間ではライフサイクルの観点から校舎の整備・運用を計ろうという意識は低く、また、当面する業務に追われ、将来展望や新しい学校のあり方を考えるゆとりのない実態が明らかとなった。一方、全面改築や新設の校舎では、多目的スペ-ス・オ-プンスペ-スを効果的に配置するなど、学校施設の現代化を実現している事例も数多くみられた。 以上を踏まえ、在来型(一文字・片廊下)校舎の学校について、全面改築または大規模改造(+-部増築)によって現代化を実現する場合のライフサイクルコストのシミュレ-ションモデルを作成した。これによって既存の在来型校舎の学校について、改築するか大規模改造するかの意志決定の際の指標を示すことができた。
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