高エネルギ-中性子による材料の照射損傷はボイドスウェリングや脆化の原因となり、照射材料の組織や機械的性質に関しては核融合炉材料工学とも関連して、広汎な基礎的、開発的研究が行なわれている。しかし、照射下での材料の組織形成、変化を津速する構成原子の輸送基礎過程、すなわち、拡散機構の詳細や拡散係数の大きさに関する知見は皆無に等しく、今後の研究に待つべき点が多い。本研究では中性子照射下での比較的低温における超低速拡散を放射性同位元素を用いて高精度に測定するためのマイクロセクショニング装置を試作した。本装置は超高真空中に取り付けたイオンガンからのAr^+イオンビ-ムによって照射拡散試料をスパッタし、そのスパッタ原子を約10〜20nmごとに堆積し半導体検出器によりその放射能強度を測定して拡散係数を高精度に測定するものである。このようにして試作された装置を用いて、中性子照射誘起拡散の測定法を確立することを本研究の主な目的とした。 試料は超純度アルミニウムに鉄を約10nmだけ電気メッキによって付着させたものを用いた。試料の照射中の酸化を抑制するため、この試料をアルミニウムキャプセルに真空中で電子ビ-ム溶接によって封入した。JMTRにおいて次の2種類の材料照射実験を行なった。200Cおよび400Cの一定温度に保持してそれぞれ168hrおよび533hrの中性子照射を行なった。 照射拡散後の試料を半導体検出器によって測定し、拡散原子種が放射化していることを確認した。作製したイオンビ-ムマイクロセクショニング装置を用いて照射誘起拡散係数を測定した。
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