前年度までの研究により初期凝固に及ぼす雰囲気ガス、チル板表面材質など環境諸因子の影響を明らかにしてきた。この結果、初期凝固に伴う過冷度は冷却速度に依存し、雰囲気ガスなどに依存しないこと、冷却速度が増加するとステンレス鋼の初期凝固組織は準安定オーステナイト相セル組織となること、初晶晶出相が安定相から準安相へ遷移する臨界冷却速度は約5000℃/sであることが明らかになった。 これらの結果を基に平成4年度は、初晶晶出相選択機構、初期凝固に及ぼすじょう乱諸因子の影響、オンラインモニタリングシステムの検討を行なった。 まず、初晶晶出相の検討として、過冷溶湯中へのデンドライト成長速度を各相について求め、成長速度による優先成長相決定の可能性を検討した。その結果、安定相、準安定相のデンドライト成長速度が逆転する過冷度は実験結果を説明するほど大きくはなく、これのみでは初晶晶出相を予測することは困難であった。したがって、核生成機構を何らかの方法で考慮したモデルを構築する必要があることが明らかになった。次に初期凝固に及ぼすじょう乱因子を検討するために、チル板に超音波振動を加えた実験を行なった結果、超音波加振により著しい組織の微細化が生じるとともに、初期凝固時の過冷度が減少し、核生成が促進されたことが明らかになった。最後に、本研究の成果をオンラインモニタリングシステムに適用する場合の問題点を検討し、光計測孔の保持などの問題が解決されれば十分に実用可能であるとの結論を得た。 これらの本年度までの研究成果は「鉄の鋼」誌に研究論文として掲載されている。
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