研究概要 |
NiーAl系に存在するNiAlーβ相は,広い固溶度を有するB2構造の規則相であり,36〜38at.%Alの組成範囲で,熱弾性型マルテンサイト変態を起こし形状記憶を示す.しかし,β相は極めて脆いので,それが実用化を阻む1つの障害となっている.本研究は,NiーAlーX系におけるγ相(Al構造)とβ相の2相合金の組織制御を行うことによって加工性の改善をおこない,この合金の形状記憶特性を向上させる方法について検討を行った. 本年度は,以下に示すようにNiーAl基合金における熱間加工性改善の原因を解明すると同時に,NiーAlーFe系について合金設計上不可欠な基礎資料となる平衡状態図やマルテンサイト変態温度を明確にした. 1.NiーAlーX(X:Fe,Cr,Co,Cu)合金を高周波溶解し,熱間加工性を調べた.その結果,X:Fe,Coの時に加工性が良好であることを見いだした.また,NiーAlーFe合金を基本にして第4元素X(X:Ti,V,Cr,Mn,Co,Cu,W,Mo,Nb,Si,C,B)を数%添加した合金の場合は,X=V,Cr,Mn,Co,Cu,Mo,Wで良好な加工性を示した.このような加工性の良好な合金の鋳造組織は,β相がγ相を取り囲んだ等軸晶的な2相組織となっていた. 2.NiーAlーFe合金のマルテンサイト変態温度を測定した.その結果,この合金のマルテンサイト変態温度は,熱処理温度に大きく影響を受けることが明らかになった. 3.NiーAlーFe合金の形状記憶特性は,γ相の体積分率に依存し,γ相が少ない程良い.本年度の研究では,熱間加工性も良好でかつ最高90%程度の形状回復率を有するNiーAlーFe合金が得られた. 4.NiーAlーFe合金を平衡化熱処理し,EDXによりγ,β両相の濃度分析を行った.その結果は,今までに報告されている実験状態図とほぼ一致した.また,NiーAlーFe系状態図のコンピュ-タ-解析も行った.
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