最近、Fe-希土類元素金属間化合物のラ-ベス相で極めて大きな磁歪効果を示すものが発見され、注目を集めている。これらは通常の磁歪合金より2〜3桁ほど大きな磁歪を示すが、結晶異方性を有するため、その性能を最大限に発揮するためには、単結晶を育成する必要がある。単結晶の育成には融液から行なう方法と、塑性変形させた結晶を再結晶させて成長させる方法があるが、工学的には後者の方が有利である。 昨年度は前者のBridgman法によって良質な単結晶の育成が可能なことを示したが、本年度は再結晶法で単結晶を育成させることを企画し、Fe-希土類元素金属間化合物の塑性に関するその基礎的なデ-タを得ることを目的とした。 Bridgman法によって育成した単結晶から3種類の方位を有する試験片を切り出し、600〜950°Cの範囲で圧縮変形した。850°C以下では何れの方位でも殆ど塑性変形を示さないが、875°C以上では塑性変形が起き、950°Cでは最大30%程度の変形が可能であった。 変形後の転位相識の電子顕微鏡観察より、転位は{111}面上で大きく拡張し、ここの部合転位が著しい方向性を示すことから、塑性を支配する因子としてはパイエルス力であると同定した。 このように、高温では塑性変形が可能であることから、再結晶法による単結晶の育成は有望であると結論した。
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