1500℃近傍の超高温における使用に耐え得る耐熱材料として、結晶構造、溶融温度、耐酸化性等を考慮した結果、その候補材料として遷移金属シリサイドを選択した。これらのシリサイドのうち、本研究においてはC116型、C40型およびD8_8型シリサイドとしてMoSi_2、WSi_2、CrSi_2、TaSi_2およびTi_5Si_3系シリサイドをとり挙げ、その単結晶を用いた高温強度、加工性等の変形挙動および変形機構を明らかにするとともに、その結果に基づき、第3元素添加等による変形能改善の可能性について調べた。 MoSi_2およびWSi_2は900℃を越える高温領域で変形可能となり、特に、1200℃近傍の高温領域では著しい加工性の改善が認められる。その変形は体心正方晶としての特徴が現われ、そのすべり系の数という面では問題はないが低温での加工性の欠如は超格子転位の易動度が小さいことに起因している。しかし、Cr、Ta等C40型構造を安定化する元素の添加により、積層欠陥エネルギ-を低下させ、新たなすべりを活性化させることにより著しく加工性を改善することが出来た。 CrSi_2、TaSi_2等の六方晶系シリサイドは単相状態では底面での変形しか起らず、そのため多結晶状態で単相としての使用は困難である。しかし、C11b型シリサイドとの擬二元あるいは三元系としてその欠点を補うことが可能である。またTi_5Si_3は主に双晶形成により変形が進行する。このシリサイドは高温強度に優れているためTiSi_2あるいは他のシリサイド相との複合相の強化相として使用可能である。これら一連の高融点シリサイドは耐酸化性という意味では1500℃、大気中の長時間使用においても問題はない。また実用的に重要なクリ-プ強度も優れており、そのクリ-プは転位クリ-プによって支配される。そのため微細粒子分散等その組織制御により更にクリ-プ強度を改善することが可能である。
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