研究概要 |
希土類蛍光体を用いる新しいイムノアッセイシステムを構築するための設計指針の解明を目的として,螢光測定媒体として化学的化学的環境の制御が容易な可塑剤含有透明高分子に着目し,これと組み合わせる,光エネルギ-の伝達機能と2相間分配機能を併せ持つ配位子について研究した.(1)先ず,窒素レ-ザ-を使用する時間分解螢光システム(数百μsレンジ)の立ち上げと調整を行い,精度の高いシステムに仕上げた.(2)芳香環を持つ8配位のポリアミノカルボン酸の機能を系統的に調べた.キノリン環を持つquin2,アミノフェノ-ルから誘導された2座のエ-テル基を持つbapta及びそのフッ素及び臭素誘導体,それにインド-ルを導入したindo-1,フランを導入したfura-2に対して,サマリウム(Sm),ユ-ロピウム(Eu),ガドリニウム,テルビウム(Tb),及びヂスプロシウムを組み合わせた30組について励起及び発光スペクトルの測定と相対螢光強度を測定し,quin2-Sm,quin2-Eu,bapta-Tb,F-bapta-Tbの4種類が特に優れた発光特性をもつことを見いだし,そのスペクトルを帰属した.その中で,Bapta-Tbは通常の螢光分光器を使用しても,ICP-MSよりも1桁高感度なシグナルを与える優秀な発光ラベルであることを知った.(3)Eu(III)-アセチルアセトン誘導体(tta)-フェナントロリン(phen),の系はphenの共存によって螢光強度が3倍強となるが,phenなしでもpH10付近で螢光強度が2桁増大する現象を見いだした.これはイオン対,Q^+[Eu(tta)_4^‐]の生成に起因することが明かとなった.(4)可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP)を含有するポリ塩化ビニルを抽出媒体とするための分配特性,DOPの螢光媒体特性,濃縮機能について検討し,Q^+[Eu(tta)_4^‐]には良い媒体ではないがエチルバイオレットでは1桁強,螢光強度の増大が見られた.溶質と媒体のマッチングにより,優れたシステムを構築できる可能性を見いだすことができた.
|