研究概要 |
昨年に引き続き、分子レベルでの無機-有機ハイブリッド(ナノハイブリッド)化を利用した新しい固体電解質の開発を目的として、リン酸ジルニウム層状結晶をホストマトリックスに用い、その層間表面の有機化学修飾を行なった。ハイブリッド層間へのリチウム塩の層間固溶とイオン伝導度測定を行ない、固体電解質としての性能を評価した。 1.有機誘導体の合成:γ-リン酸ジルコニウムを層状マトリックスとして、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの層間開環反応による誘導体の合成、層間表面のリン酸水素基とリン酸モノエステル(CH_3-(OCH_2CH_2)n-OPO_3,n=2,3)とのイオン交換反応による誘導体の合成を行ない、エ-テル酸素基を導入した。リン酸エステル(H(OCH_2CH_2)4-OPO_3H_2およびH_2O_3P(OCH_2CH_2) _4-OPO_3H_2)とZrOCl_2・8H_2Oとの直接反応によりα-型リン酸ジルコニウム誘導体を合成した。 2.これら各種の有機誘導体へのLiClO_4およびLiCF_3SO_3の固溶限界を、昨年度確立したラマン分光法とX線回折法により決定した。 3.イオン伝導度測定:リチウム可逆電極を用いる直流法およびインピ-ダンス測定による交流法を併用して各種ナノハイブリッドの固体電解質特性を比較検討した。 4.リチウム塩の固溶量はエステル結合で層間にグラフトした有機鎖の種類や反応量、層間架橋の有無によって異なるが、リチウムイオン伝導度は室温で約10^<-9>〜10^<-11>Scm^<-1>程度であり、組成による伝導度の大きな改善はできなかった。しかし、テトラヒドロフラン蒸気を吸着させると、多くの試料について、室温においても伝導度は約10^<-5>Scm^<-1>まで著しく増大し、高イオン伝導体が得られることを見出した。実用化のためには溶媒分子を含まない固体電解質であることが望ましい。溶媒分子も含めたエステル基を層間に導入したナノハイブリッドの合成が望まれる。
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