本年度(初年度)は、前半にプロパン・スス粉末及び活性炭をモデル物質としてとりあげ、後半にディ-ゼルエンジン・スス粉末のガス化を試験(550〜700℃)した。炭素への含浸処理剤としてKOH、NaOH、KClを取り上げ、ガス化剤に水蒸気と炭酸ガスを用いた。流通法によるガス化と吸着実験やX線回折実験などからつぎの知見が得られた。 1.KOHの処理効果が最も大きく、例えば700℃水蒸気ーHe系で未処理ススの場合に比べるとガス化速度は約50倍増加した(KOHはC+H_2O→CO+H_2を促進)2.活性炭のガス化速度と異なり、ススのそれの経時変化は比較的小さく安定していたが、生成ガス組成はかなり変化した(例えば、エンジン・ススで初期の生成H_2は6割、CO_2、COは各2割であり還元性ガスの割合が高かったが、3時間後にはH_2とCOが減少しCO_2が5割以上に達した)。CH_4は1%以下であった3.CO_2気流中でもKOHの処理効果が大きく、ススを介してCO_2がCOに還元された(KOHはC+CO_2→2COの反応を促進)4.反応管形式は吹き込み型よりもU字管型(自作)が、および水の供給速度はできるだけ小さく1mmol/h程度が安定したガス化速度を与えた5.KOHの処理法として水溶液含浸と溶融含浸を施したが、ガス化速度には大差はなかった。しかし処理後のススの吸着特性にかなり大きな差が認められた6.ガス化前後のKOH含有率は、ススと活性炭で大きな差が出た(表面でのKOHの結合力を反映)7.X線回折や熱分析測定によってKOH添加によるの炭素の構造変化を調べた結果、KOHがガス化の触媒として作用していることが判った8.水蒸気、CO_2両系におけるKOHの触媒サイクルを熱力学的推算とも併せて考察した。 次年度には当初の計画の他に、KOH処理後の炭素表面特性(ガス吸着性、表面積、構造変化、熱化学変化)などをさらに詳しく調べることによって炭素表面の改質を進めるとともにKOHの触媒効果を一層明らかにする必要がある。
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