研究概要 |
種々の化学的処理を施したプロパン・スス,ガソリン・スス,軽油・ススおよび活性炭にガス化剤の水蒸気や炭酸ガスを高温で接触させることによって,ススを化学的に有用な物質に転換せしめる方法を提案し,その実用化に必要な条件や展望を明らかにした。以下にそれを箇条書にする。 1.水酸化カリウム(KOH)処理後の各種ススは,水蒸気の存在活性ガス気流中700℃近くではかなり高い割合で水素(H_2)と一酸化炭素(CO)に転換することがわかり,KOHが水性ガス反応の触媒になっていることを明らかにした。 2.生成物中の炭酸ガス(CO_2)の割合が無視できなかったが,これは主としてCOのシフト反応(CO+H_2O→CO_2+H_2)に基づくものであることを確かめ,ススのいわゆる燃焼によるものではないことを示唆した。 3.KOH触媒はススのBoudouard反応(C+CO_2→2CO)にはあまり寄与していないことが判ったが,これは,KOHがCO_2によって炭酸塩化する(2KOH+CO_2→K_2CO_3+H_2O)ことと関連している。 4.(CーH_2O/KOH)の反応系ではCH_4生成は高々1%程度であったが,生成ガスを別途直接メタネ-ション触媒(Pd/ZrO_2)に導いたところ,COのほとんどがメタン化されることが実証された。したがって,ススは合成ガス(CO+H_2)のみならず,メタンを得る反応原料にもなることがわかった。 5.KOH処理後のススの構造を表面積測定やX線回折測定,熱分析,電子顕微鏡写真観察などにより解析した結果,KOHがススのチャンネルネットワ-ク形成に主要な作用を及ぼし,表面炭素のガス化に物理的化学的に重要な役割を果していることが示唆された。 6.水蒸気または炭酸ガス中のススのガス化におけるKOHの触媒機構を考察し,KOHの脱水・還元・酸化・水和の触媒サイクルを提案した。
|