研究概要 |
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;以下AFMと略す)は走査トンネル顕微鏡(STM)の一つのファミリ-として発展してきたが、ごく最近絶縁物表面の原子構造まで解像可能であることが明らかになりつつある。研究代表者らはすでにSTMによる各種金属電極及び半導体電極表面の構造を原子レベルでの解像力で、溶液に浸かったままその場測定(in-situ)測定する方法を完成している。しかし、この方法によると、観察対象は電子伝導体に限られ、化学的に興味ある多くの絶縁物には応用する事は出来ない。こうした背景のもとに本試験研究においては、絶縁物表面の原子構造を液体中で直接その場(in-situ)測定しうる方法の確立を行い、そのための関連装置と測定技術の開発を目的とした。 本年度の研究実施計画は以下の項目について、主に装置開発を中心に行なった。1.液体中AFM本体の開発;AFM装置本体の開発においては、3つの重要な要素がある。(1)カンチレバ-の開発(2)位置検出方法、(3)試料をX,Y,Z軸に動かすピエゾ圧電体の開発である。2.液体中AFM制御回路の開発;基本的にはSTMの制御回路が使用可能と考えられるが、カンチレバ-からの反射光を位置検出する前置増幅器との整合性等を検討する。3.防振・防音構造の確立;STM開発で確立した技術をさらに向上させ、0.1オングストロ-ム以下の凹凸像を解像可能にする事を目的とした。 以上の結果、Au(111)面上に存在する単原子ステップ(高さ2.4Å)を明確に解像された。しかし、Au(111)面上の原子を解像するには、上記した第1項目である装置のより一層の改良が必要となっている。AFMと技術的には同じ要素開発が必要なSTM装置を用いた研究においては世界的な成果を本研究期間において上げた。
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