研究概要 |
当初の計画に従い、本試験研究初年度に試作した超音速イオンビーム装置を、フロンに代わるエッチングガスとして期待されるCHnCl_<4->n,CHnF_<4->nとAr^+とのイオン-分子反応の研究に適用した。生成物イオンとしてCH_3ClではCH_3 ^+(91±5%),CH_2Cl^+(9±5%)、CH_2Cl_2ではCH_2Cl^+(95±2%),CH_2Cl_2 ^+(5±2%)、CHCl_3ではCCl^+(69±3%),CHCl_2 ^+(31±3%)、CH_3FではCH_2F^+(67±3%),CHF^+(14±2%),CH_3 ^+(16±2%),CH_2 ^+(3±1%)、CH_2F_2ではCH_2F^+(91±2%),CHF_2 ^+(9±2%)、CHF_3ではCHF_2 ^+(54±3%),CF_3 ^+(46±3%)が得られた。Ar^+反応では、フランク-コンドン的に有利なイオン状態への遷移確率が大きい光イオン化法や電子衝撃法の結果とは異なり、近共鳴的な励起イオン状態への遷移確率が大きいことがわかった。本研究によりAr^+反応によるハロメタン類のイオン化が、従来の光や電子によるイオン化とは大きく異なることが初めて示された。 Ar^+/CHnCl_<4->n,CHnF_<4->n反応系の全速度定数を決定し、CH_3Clでは(1.3±0.5)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CH_2Cl_2では(0.97±0.42)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CHCl_3では(1.2±0.6)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CH_3Fでは(1.7±0.6)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CH_2F_2では(1.9±0.7)X10^<-9>cm^3s^<-1>、CHF_3では(2.0±0.6)X10^<-9>cm^3s^<-1>という値が得られた。これらの値は、LGSもしくはADO理論値の57%以上を占め、Ar^+のエネルギー近傍にイオン化のフランク-コンドン因子の大きい近共鳴状態の存在の有無に依存しなかった。従って、Ar^+反応においてフランク-コンドン因子は、従来、提唱されているほど反応を支配する重要な因子ではないことがわかった。本研究よりエッチングガスとして、CHnCl_<4->nも現在、使用されているフロンガスと同様にエッチングに活性な化学種の生成速度が速いことが明らかになった。
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