研究概要 |
アクロレイン,アクリロニトリル等の炭素数3の中間原料は,現在プロピレンの酸化またはアニモ酸化で合成されているが,燃料ベ-スの評価しか受けていない安価なプロパンを原料に使うことを目的に当研究がはじめられた。すでに前年度高濃度プロパン(35〜40%)と酸素の混合ガスを,500℃附近の温度で欠陥シ-ライト型の複合酸化物上に通すと,プロパンの転化率10〜20%で,選択的(60%)にアクロレインが生成することを見出した。さらに系にアンモニアが共存すると,アクリロニトリルが生成することも発見した。 本年度はこの収率を高める手段を開発することを目的に,反応機構の検討を行った。反応ガス組成の変化,反応の温度依存性の測定などから反応は,プロパンがラジカル的な均一反応により酸化脱水素され,次に触媒上で酸化またはアンモ酸化を受けてアクロレインおよびアクリロニトリルに転化することが明らかとなった。現在世界的に検討されているプロセスの大部分は,この機構に基いていることも明らかにした。シ-ライト系触媒を中心に,単流収率の向上を計った結果,最高値としてアクロレインで選択率62%,収率12%,アクリロニトリルで選択率65%,収率15%を得た。この値は選択性はそれほど低くないものの,転化率が低いため収率が向上しない問題点があり,また対空時収率の向上も計る必要が明らかとなった。上記の研究と並行して,プロパン低濃度で,ラジカル反応を全く含まず,表面反応のみで進むプロセスについても検討を行った。アンチモニ,バナジウム系複合酸化物を中心に検康した結果,原料プロパン濃度7%以下で,転化率70%,選択性40%を得たが,高濃度法に比較して選択性が若干落ち,この点をさらに改良する必要があることが明らかとなった。次年度は,これらの知見を総合して,最適プロセスを設計する方向で研究をまとめる予定である。
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