生理活性及び機能性を有する重水素標識化合物の位置選択的合成

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02555176
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 田代 昌士 九州大学, 機能物質科学研究所, 教授 (40038576)
• 研究分担者: 都築 廣久 九州大学, 機能物質科学研究所, 教務員 ; 柘植 顕彦 九州大学, 機能物質科学研究所, 助手 (80179986)
• キーワード: 重水素標識 / サルチル酸 / アスピリン / ラネ-合金 / NaODーD_2O / コルベ電解反応 / 脂肪酸 / NMRスペクトル

研究概要

本研究担当者らは重水素標識安息香酸及びフェノ-ルの合成を対応する臭素化体の重水中での還元的脱臭素化反応により容易に行えることを明らかにして来た。この手法を基本的な手段として、重水素標識サリチリ酸、アニリン、ナフタリン、チオフェンの位置選択的合成を検討すると共に、重水素標識脂肪族化合物の選択的合成法の開発研究に着手して、以下に述べる成果を挙げた。
まず、種々の臭素化サリチル酸の位置選択的合成法を確立した。それらを10%NaOD中ラネ-/CuーAl合金で処理することにより、それぞれ対応する重水素化体が高収率かつ高同位体純度で生成することを明らかにした。さらに、重水素標識サリチル酸より容易に対応するアスピリンが合成できる方法を確立した。
また、上記のアルカリ水溶液に可溶な酸又はフェノ-ル類と異なって、臭素化されたナフタレン、アニリン及びチオフェンなどのアルカリ水溶液に不溶性物質の場合には、溶剤としてテトラヒドロフランやジオキサンを用いることによって、先に述べた方法が対応する重水素標識化合物の合成に適応されることを明らかにした。これらの研究過程において、ラネ-/NiーAl合金を用いると、HーD交換反応が併発し同位体純度が極めて低下することを見いだした。
臭素化脂肪酸類や不飽和脂肪酸類もまた上述の方法によって容易に対応する重水素標識脂肪酸を合成し、またこのようにして得られた重水素標識脂肪酸のコルベ電解反応により対応する脂肪族化合物が合成できることを明らかにした。さらに、重水素標識ジカルボン酸のモノエステルのコルベ電解反応により、より高級なジカルボン酸が得られることを見いだした。
現在、このようにして得られた種々の重水素標識有機酸の ^1HーNMR、 ^2HーNMR, ^<13>CーNMRやMssなどの各種スペクトル及び抗黴性などの生理活性について検討している。

研究成果

• [文献書誌] 田代 昌士,又賀 駿太郎,都築 廣久: "重水素標識化合物の位置選択的合成法の開発研究(その2)" 和光純薬工業株式会社時報. 58. 1-21 (1990)
• [文献書誌] M.Tashiro,H.Tsuzuki,T.Tsukinoki,S.Mataka,K.Nakayama,T.Yonemitsu: "Preparation of Deuteriated Naphthalenes Anilines,mーTouidines,and Anisoles by Reductive Dehalogenation of the Corresponding Halogenated Derivatives with Raney CuーAl Alloy in an Alkaline Deuterium Oxide Solution" J.Labelled Compd and Radiopharma.28. 703-712 (1990)
• [文献書誌] M.Tashiro,H.Tsuzuki,H.Goto,S.Ogasahara,S.Mataka: "Preparation of Deuteriated Adipic [ ^2H_2]ー,[ ^2H_4]ー,[ ^2H_5]ー,and [ ^2H_8]ーAcids by use of Kolbe Electrolysis as Key Reaction" J.Labelled Compd and Radiopharma.28. 855-866 (1990)
• [文献書誌] M.Tashiro,H.Tsuzuki,S.Isobe,H.Goto,S.Ogasahara,S.Mataka,T.Yonemitsu: "Preparation of Deuteriated Succinic Acids by use of Raney Alloys in 10% Sodium Deuterium Oxide Solution" J.Labelled Compd and Radiopharma.29. (1991)
• [文献書誌] M.Tashiro,H.Tsuzuki,H.Goto,S.Ogasahara,S.Mataka: "Preparation of 4ーphenylbutyric [2,3ー ^2H_2]ー,[4,4ー ^2H_2]ー,[2,2,3,3ー ^2H_4]ー,and [2,2,3,3,4,4ー ^2H_6]ーacids by use of crossed Kolbe electrolysis as a key reaction" J.Labelled Compd and Radiopharma.29. (1991)
• [文献書誌] M.Tashiro,H.Tsuzuki,S.Mataka,T.Yonemitsu: "Preparation of Valeric Acids,Pentenoic Acids,and γーValerolactones Labelled with Deuterium" J.Labelled Compd and Radiopharma.29. (1991)