研究概要 |
現在まで本担当研究者らは、重水素標識化合物の位置選択的合成を高純度で行う方法の開発研究の一環として、重水素標識フェノ-ル、安息香酸サルチル酸、多酸フェノ-ル、アニリン、ナフタリンなどの芳香族化合物の重水化反応に成功している。本年度においては、主として重水素標識化合物の位置選択的合成法開発を行い以下に述べる成果を挙げたので報告する。 1.まず、容易に還元的開裂反応が起こり対応する脂肪族化合物を与えることが知られているチオフェン類の還元反応を種々の条件下に検討した結果、アルカリ水溶液中Cu-A1合金を用いるとチオフェン環の開発は起こらず、還元的脱臭素化反応が移行した。一方、Ni-S1合金を使用すると期待した脂肪族化合物が生成することを明らかにした。例えば、吉草酸-d_9、セプロン酸-d_<11>、アジピン酸-d_8、ペテルブン酸-d_<17>、セバジン酸-d_<16>、トリデカン酸-d_<25>をそれぞれ対応する臭素化チオフェン酸の環元反応を10%NaDO-D_2O中ラネ-Ni-A1合金で処理することにより高収率かつ高同位純度が得られた。さらに、臭素化脂肪酸及び不飽和脂肪酸の同様な還元法により対応する重水素証標識脂肪酸が生成することを見いだした。例えば、ベンタン酸2,2,3-d_3、ベンタン酸-2,3-d_2、ベンタン酸-4,4,5,5-d_5のコハク酸-2,3-d_2、コハク酸-2,2,3,3-d_4などは上述の方法によって得られた。 このようにして得られた重水素標識脂肪酸のコルベ電解反応により、対応する重水素標識アルカン類が合成できることを明らかにするとともに交差コルベ電解反応により高級脂肪族の重水素標識化の合成に成功している。 さらに上述の方法によって合成した重水素標識化の1H-,2H,及びC^<13>-核磁気共鳴スペクトルについて詳細に検討し、有機化学における構造科学的な多くの知見を得た。
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