研究概要 |
光学異性体の直接光学分割の最も有用な手段として、不斉固定相を備えたクロマトグラフィーによる分離法の開拓が重要な課題となっている。本研究では高い不斉識別能の期待される軸不斉ビナフタレン類の簡便な調製法を開拓し、それを用いて光学異性体の直接光学分割に高い分離機能を備えたクロマトグラフィー不斉回定相を開拓することを目的とし、平成2年度以来の研究計画に従って研究を遂行し、現在までに以下の主なる成果を得、所期の目的をほぼ達成することが出来た。 1.軸不斉ビナフタレン類をシリカゲルに固定したHPLC用不斉固定相を多数調製し、その不斉識別能を詳細に検討し1,1'-ビナフチル-2-カルボン酸誘導体が優れた光学分割能を有することを見出した。 2.新規な芳香族求核置換反応を見出し、必要となるビナフタレンカルボン酸骨格を簡便に調製する方法を開拓した。即ち、1-アルコキシ-2-ナフトエ酸エステルと1-ナフチルGrignard試薬との反応により、1-アルコキシル基がGrignard試薬により置換され、1,1'-ビナフチル-2-カルボン酸エステルを高収率で得た。 3.上記2のビアリールカップリング反応を利用して得られる2'-メチル-1,1'-ビナフチル-2-カルボン酸エステルの側鎖メチル基の酸化法を開拓し、下記4で必要となる軸不斉1,1'-ビナフチル-2,2'-ジカルボン酸の大量合成法を確立した。 4.特に不斉識別能に優れ、かつ実用可能な不斉固定相として軸不斉1,1'-ビナフチル-2,2'-ジカルボン酸を含む3種のHPLCカラムについて80種以上の光学異性体の直接分離が可能であることを実証した。 5.本研究で開発した不斉固定相による光学異性体の分離機構を詳細に検討し、合理的な不斉識別機構を提案することが出来た。 以上、本研究の不斉固定相による効率的光学分割が期待される。
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